埃の正体とはなにか? なぜ掃除で埃を取り除かなければいけなのか? について書いていきます。
私たちにとって埃は最も身近な存在の一つです。
彼らは常に私たちの生活空間に存在し、定期的に部屋のあちらこちらに居座ります。いくら私たちが強制排除しても、またすぐに同じ場所に戻ってきます。
もし食品工場に埃があれば、害虫や細菌が集まってきますし、食品の異物混入問題にも繋がります。日常生活では、人によってはハウスダストというアレルギーの心配をしなくてはならず、非常に厄介な存在です。
しかし、それにも関わらず埃についてあまり知られていません。埃とは何なのか?少し深く掘り下げてみました。
埃というと、私たちの身の回りにある、あの白くてふわっとしたものをイメージしますね。
中身の3分の2が、衣類や靴底に付着した微粒子や窓から入ってきた土ぼこりなど家の外に由来のもの。 3分の1が、家庭内で人やペットの皮膚細胞がはがれ落ちたものや毛、食べ物のカス、プラスチック、土などと言われています。
なるほど、生活残渣がまとまったようなものですね。
しかし、一つ疑問が出てきます。
私たちはなぜこの埃をそこまで生活から排除しようとするのでしょうか?前述した食品工場やアレルギーがある場合は、掃除が必要でしょうが、それ以外であれば、わざわざ排除が必要なものなのでしょうか?
そもそも、私たちの祖先は何万年もの間、洞穴や窓の無い住居に暮らしていたはずですから、常に外から砂塵などが入ってきてたわけです。それをいちいち掃除していたというのも考えにくい気がします。
ならばなぜ…
その答えは大きく分けて3つあるようです。
【1】照明が無かった時代は、今よりも部屋の中の埃が目につかなかった。それが、電気やガスを使った照明の登場で家の中が明るくなり、ものがよく見えるようになったのと合わせて埃も目につくようになった。
【2】人々の消費が拡大したことで、華やかで人目を引く室内装飾や、綺麗な家具が購入されるようになると、埃が目立つようになった。
【3】公衆衛生の概念と、微生物の危険性に対する意識の高まりにより、家をきれいに片づけるという考え方が定着し、埃は不衛生なもの、と考えるようになった。
私たちの経済環境や生活環境の変化と、衛生に関する意識の変化が、埃に対する見方を変えていったようです。
では、埃自体は実際にどれくらい不衛生なものなのでしょうか?花王㈱がある研究結果を公開していました。以下はその研究結果の引用です。
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■調査方法
調査① 対象:首都圏4世帯
室内3か所
(リビング床、棚の上及びTV裏、照明のカサ)
ホコリ16サンプル採取
期間: 2013年7月
菌:標準寒天平板培養法/カビDRBC寒天平板培養法にて培養し、菌・カビ数を測定
調査② 対象:首都圏8世帯
室内6か所
(棚上及びTV裏、カーテンレール、リビング壁、リビング床、トイレ床、ラグ及びカーペット下)
ホコリ48サンプル採取
期間:2014年7月
菌:標準寒天平板培養法/カビ:ポテトデキストロース(10%)寒天平板培養法にて培養し、
菌・カビ数を測定・同定
■結果
(1)家の中にあるホコリには、菌・カビが存在
採取したホコリサンプルのほとんどに菌・カビが存在していました。菌・カビは、ホコリ1g中に約数万~数千万cfu (個)程度存在しており、屋内外から飛散した菌やカビは、ホコリに蓄積しやすいことが推測されました。
(2)家の中で一般的に存在する菌・カビが検出された
採取したホコリを細菌用培地と真菌用培地で培養し、菌・カビの種類を確認したところ、自然界に広く分布している好気性芽胞菌や、ヒトや動物からよく分離されるカタラーゼ陽性グラム陽性球菌が多く検出されました。また床からは、環境衛生管理上の汚染指標菌とされている大腸菌群が多数検出されました(今回の調査で、大腸菌は未検出)。また、検出されたカビの種類は、一般的な黒カビが中心でした。
(3)菌・カビは、高い場所(棚上・照明カサ)よりも、低い場所(床)に多く存在(ホコリ1gあたり生菌数)
家の場所別にみると、ホコリ1gあたりに存在する菌・カビ数は、高い場所よりも低い場所のほうが多く、人の動線上に多い傾向がありました。
床にあるホコリの菌数は、トイレよりもリビングのほうが多いという結果でした。リビングは、人が居る時間が長いのでホコリが発生・蓄積しやすいこと、食べこぼしなどが存在する可能性が高いこと、高い場所のホコリが落下すること、などが要因と推察されます。
(4)子どものいる家庭のほうが、菌・カビ数が多い
子どものいる家庭といない家庭から採取したホコリの菌数を比較してみると、子どものいる家庭のほうが菌数が多く、とくにリビング床の菌数が多い傾向でした。除菌意識の高い乳児のいる家庭にとっては、気になる結果となっています。
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とても面白い結果ですよね。人の生活する場所によって埃の菌数にも違いがあるようです。科捜研なら埃から人の生活様式を推察することすら可能のなのかもしれないですね。芽胞菌も含まれるということは、外の土壌などから風に乗って入ってきたものなのでしょうか。
また、「菌・カビは、ホコリ1g中に約数万~数千万cfu (個)程度存在」とありました。食品衛生の観点から見ますと、「数千万cfu (個)」というと生肉の表面に存在する菌の数と同じくらいというイメージです。これって想像していた以上に多い気がします。まさかそれだけの量が…といってもその内訳は生肉よりも食中毒菌が少ないのでは無いかと思いますが。